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2025/07/14

設計と情緒

 


















7/5のOpen Migiwaで木船の設計を80年(15歳から初めて御年95歳!)やられているマルナカ工作所の中田武治さんにお話を伺った。

中田さん曰く木の船は手描きでなければ描けないという。木の定規を複数の文鎮で押さえてしならせることで波や空気の抵抗を受けにくい絶妙な曲線を描く。張る面材も木であるから木の定規を使って無理のない曲線であれば施工も無理なくできるとのこと。これがコンピュータで書いた線だと現場では上手くいかない。まさに木と共創しながら図面を描いている。



波や風のような自然環境とエンジニア的、数学的感覚だけでなく身体的感覚でもって対峙しているように感じた。さらには中田さんは風水にも精通しているそう。どこまで設計しても神頼みの部分が残るし、解明できない部分があるという謙虚さを感じた。

見えないし認知できないが存在する(と思われる)ものとどう対峙するか。数学者の岡潔がいうところの「情緒」のようなものが設計にも必要なのではないかと感じた。それは二元論的に明解に割り切れる設計ではなく、木や波や風という未知なる自然と対峙した設計ではないか。

2023/03/23

Nostalgy x Technology

時空間を連続させるための技術
昨今のテクノロジーは過去や周辺環境と決別するためにあったように感じる。例えば、過去にあったものを継承しないハイテクノロジー、フィックス窓で周辺環境と断ち切り全館空調することなど。
これからのテクノロジーは、隔たれた空間を繋げるため、過去を継承して未来に繋げるため、ありとあらゆるものを排除するのではなく、共生していくためのオープンなものであるべきである。

2022/10/26

Seeing winds or Becoming winds?


「ナバホ社会では、地上のあらゆる存在者が造られるのに先立って、風があった。ナバホの古老によれば、地下世界には最初に風があった。風が「男」や「女」、「話す神」や「呼ぶ神」に対して、息つまり生命を授け、導きを与えていた。歌い手は、歌うことをとおして空気を変化させ、逆に歌は、大いなる自然のアニマの活動に作用を及ぼした。」
奥野克巳『モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと』 (亜紀書房、2020年、29頁)



汀での舞台イベントに文化工学研究所で開発中の風力風向センサーと汀のCFD解析シミュレーションの動画を提供させて頂いた。



目に見えない風を媒介者として演奏家やダンサーがコミュニケーションをとり、即興的に一つの舞台を作り上げていく様が素晴らしかった。
最終的には風も参加しているし、観客もうちわで扇いだりして参加しており、文字通り主客混在の状態が生まれていた。
生物以外で生命活動を認識されていないもの(今のところUnknownと呼んでいる)にどうすれば主体性を認めることができるのか、参加してもらうことができるのかを模索している。

その第一フェーズとして、①どういった特性をもっているのかを言語化、数値化したり視覚化したりしているのが、今回、文化工学研究所で提供させて頂いていた環境センサーやCFDシミュレーションである。それが必要なフェーズなのか、それによる弊害がないかというあたりも未だ模索中であるが、その次のフェーズでは、②対象と交わったり対話することを想定している。それは、建築でいうと壁を建ててみたり、開口を空けてみたり、モノを置いてみたりすることで、どのような反応が返ってくるのかをじっくりと聴くことかもしれない。そしてその後に、③主客が分かれていない無分別状態における共創=Co-creationがあるのではないかと現段階では考えている。どうやったらこのフェーズまで辿り着くことができるのか、、、

ここまで考えていたが、汀での舞台を見ていると、風のような見えない対象を数値化したり見えるようにする過程とは別に、人間側が風化(気化)するという道もあるのかもしれないと思った。分け隔てて分析するのではなく、無分別な状態、状況。抽象的でまだ具体的にどうすれば良いのかは分からないが、そのあたりに何かあると感じさせてくれる舞台だった。

2022/08/31

with invisible beings

 


設計者としてモデルのパターンをいくつか作ってからシミュレーションをするのではなく、リアルタイムで環境センサーによってカタチを一緒につくるようなことはできないかの実験です。


グラスホッパーでつくった波の形状の一つの変数にpythonで環境センサーの数字をリアルタイムで読み取らせて、それによって形状が変化していくという計画です。
上の動画はデモで、まだ環境センサーとはリンクしていません。

環境センサーはtweliteの加速度センサーを2つ使って試しています。
加速度センサー2つで風速、風向を測る計画です。
加速度センサーですので、pythonで2つの環境センサーの数値を変換して取り入れる必要があります。


まだ実験段階ですが、リアルタイムで風のような環境要素と呼応するようにモノづくりをすることが出来ないかと一つの実験です。



2022/06/28

What is an eco-house in renovation?

 須磨で改修をした長屋を環境工学的視点から改修前と後で相対的に比較してリノベーションにおけるエコハウスとは何かを考えてみます。
 省エネ法の基準を絶対値としたものではなく、予算等の制限の中でどこまで省エネ性能を向上させるのかという相対的な考え方を取り入れて改修を行った事例です。



 築43年の木造2階建て長屋を外構を含め改修するプロジェクトであり、既存塀を撤去することで敷地を街に開き、地域の人も使えるような縁側をつくりました。さらに1階の開口を改修し開放的にすることで、1階を住宅以外の用途にも積極的に使え、高齢化した住居地域に若者が流入し、彼らの暮らしが路地を介して地域社会と結びつくような新しい長屋のモデルをつくりました。




風通し

 路地に面した塀を取り払うことで、当然ですが1階の風通しが格段に良くなります。既存塀を取り払うだけではなく、開口部を3枚引きにすることで開口率を上げ、間仕切り壁を無くし、4枚の框戸でキッチンにも改修できる(床下に給排水を立ち上げています)部屋と仕切ることで、風通りを確保しています。これにより自然換気による換気効率も上がり、体感温度も下げることができます。省エネの数値上では、冷房負荷が下がるため、冷房期のエネルギー消費量を減らすことができます。

改修前



改修後


 改修前は塀の後ろで剥離渦が生まれ、うまく室内へも風が入っていないことがシミュレーション結果を断面で見ることで分かります。

改修前


改修後


改修前
改修後


 自然の風通しが良くなることで人の風通しも良くなると考えています。賃貸物件ですので、どういう人がどういう使い方をするかに依りますが、1階廻りを居住専用住宅と違ったつくりにし、街に開くことでネイバーフッド(土地に根ざした人の繋がり)にも良い影響が生まれれば良いと考えています。

外皮性能

 耐震補強と外皮性能の向上は、築40年を超えるクラスの住宅の改修における大きな課題だと思います。それに加えコストの問題もあるので、外断熱にして工種を増やすのも厳しい場合が多いです。今回は、基礎補強や筋交い等での耐力壁増設に加え、室内側は石膏ボードも耐力壁として設計しているので、断熱材をさらに内側に施工する事はしていません。床と屋根には断熱を施し、窓をアルミサッシ(単板ガラス)からアルミ樹脂複合サッシ(ぺガラス)へ改修しているので、外皮性能は上がっていまが、改修後のUA値1.35は今の基準でいうと高い性能ではないです。
 限られた予算とスペースを有効利用するという、様々な要望から考えると十分な改修だったのではないかと考えます。








ダイレクトゲイン

1階の床の一部を土間コンクリートとすることで、室外空間との連続性をつくり、使い方としても半外部的に使えるようにしました。さらに冬場は、床のコンクリートに昼間の太陽の輻射熱を蓄熱させて暖房負荷を下げるということも考えました。

輻射熱の分布


床に蓄熱された輻射熱の流れ




自然採光

改修前

改修後



 上の図は春分、秋分の12時における照度をシミュレーションしたものです。大きな変化はないですが、南側、西側の窓を大きくしたところと、駐車場の屋根を外した部分、間仕切をなくした箇所は照度の向上が見られます。

煙突効果による自然換気

 2階の天井を外しているため空間は広くなり解放感をつくっていますが、夏場や中間期に高い所で暖かい空気がたまらないように、煙突効果により効率よく換気できる特殊な換気口であるグッドマン換気口を各棟につけています。ちなみにこの換気口は、友人の父親で環境工学を大学で教えていた方が企業と共同開発したもので、室外からの新鮮な空気の給気も同時に可能な物で、換気口ダンパーの部分で熱交換できるようにも設計されています。




グッドマン換気口、サイトより


まとめ

 まず築43年の建物を取り壊すのではなく改修して使うという取り組み自体が省エネということができると思います。それに加え、余分なものを付け足すのではなく、使えるものは使い経年変化した素材を良しとして扱うという設計の方向性も数値化はしずらいですが、省エネだと思っています。
 各論として今回の改修でやったことを環境工学の視点から書きましたが、これらはバラバラに考えられたことではなく、設計段階では都市的な視点や、コストや意匠的なことも含め、同時に検討しています。重力、風、熱のような目に見えないものも含め、いろんな要素がもつ言葉をシミュレーション等を通して翻訳し、それらを一つの建築として統合されたものに出来れば良いと考えています。

2022/04/27

空き家の活用から地域をつくる

Y’s house 権現町 / 大和船舶土地株式会社










https://www.city.kobe.lg.jp/a01110/kurashi/sumai/20220415sinpojiumu.html

 神戸市建築住宅局主催の空き家活用シンポジウムでコーディネーターをするという機会より考えたことを記す。

2つのフック

 このシンポジウムの内容を関係者たちと議論していく中で以下2つのことを今回のフックとすることになった。
①敷地境界を越えて地域にどのような影響を及ぼすか。
②空き家活用に関わる各々の職業人(プロフェッショナル)が各専門性を越えてコラボレーションするか。

①に関しては多くを説明する必要はないかもしれないが、特に日本の住宅街においては各々の専用住宅が敷地境界に塀を建てて内側に閉じた建ち方となっていることによる相互関係の無さに対する問題提起でもある。さらに近年コロナの影響もあり土地に根ざした人の繋がり(=ネイバーフッド)が世界的に見直され、如何に現代人が孤立化していたかということが浮き彫りになっており、前述の問題を抱えた空き家の改修、活用はネイバーフッド再生の一つの契機にもなりうると考えた。

WIRED VOL.41 NEW NEIGHBORHOOD 都市の未来とネイバーフッド 2021.06.14 発売

②は、働き方の問題であり、各々の専門性に閉じこもっていることで多分野の人との対話を難しくし、さらには対話を通じた有機的なコラボレーションが生まれにくく、そのことが、不動産業界と建築業界、さらには運営者との溝となり、空き家活用の一つの足かせにもなっているという問題提起でもある。
これは以前COCCAfでも話したことがある竿型(専門特化型)コラボレーションと山型(越境型)コラボレーションとの違いでもある。











 多くの人が指摘しているが、いろんな問題が重層化し複雑化した現代において必要とされる人材は多分野で高度な知恵と技術をもった越境型の人材であり、リンダ・グラットン氏がいうところの「連続スペシャリスト」である。私の考え方では、一つの専門性を高めるにしても、腹筋や背筋のように効いてくる他分野の専門性も必要になってくる。
今回のシンポジウムにおいても、各々の登壇者は肩書の職業の枠に収まらない働き方をしており、それが故に各業界で新しいことを成し遂げていると感じた。

 職業の専門性に縛られず横断的に職能の枠を越境している方々に登壇して頂きシンポジウムの後半では、不動産投資家、建築家、運営者、行政による立場の違う人たちのクロストークを行った。

ボトムアップ型の再生

 神戸市においても空家空地活用担当は都市局にあったが、なかなか進まないため建築住宅局に変わり、すまいの総合窓口とし「すまいるネット」を設立し個人にアプローチするようになったそうだ。空き家活用というのは基本的には土地区画整理事業や再開発のようなトップダウン型の街づくりとは違ったボトムアップ型の街づくりだと思うが、それだけでは十分ではないかもしれない。少子高齢化し縮小化していく日本において、全ての空き家が再生され活用されるべきかというとそうでもないと思うからである。


 コンパクトシティ政策との連動も今後重要になっていくと思われる。立地適正化計画で設定された居住誘導地域の空き家活用は進めていくべきだが、それ以外は解体し、日本全体として広がり過ぎた居住地域をソフトランディングしていく必要があると考える。こういうと、田舎を切り捨てるのかという反論を受けるが、私がコンパクトにすべきだと考えているのは高度経済成長期以降の多大な住宅需要によってスプロール化していった都市部のことであって、田舎を切り捨てる事ではない。むしろヨーロッパのように都市をコンパクトにすることで田舎との差異がより大きくなり、相互の有用性がより生まれると考えている。


大体同じスケールでの阪神エリアとミラノの比較


共助、ケア
 シンポジウムでのおせっかい不動産の高橋大輔さんの話で「住宅弱者」の話が印象的でだった。住宅弱者とは、外国籍や高齢者、同性カップル、障がい者、シングルペアレントなど、実際の経済状況だけでなく社会的なイメージによって、入居審査を受ける際に不利になってしまう人のことをいうそうだ。空き家が日本中で800万戸以上、住宅の14%程を占めるにも関わらず、住宅弱者が多数存在する。
 高橋さんは単に住宅弱者と呼ばれている人達に不動産仲介をするだけでなく、街に余っていてご自身でストックしている家具や家電を無料で提供している。また、介護施設であるはっぴーの家の不動産事業部でもあるため、訪問介護等のサービスもつけている。そういった人たちにとって、お金をかけてお洒落にしたような空き家は必要ではないという話もあった。家賃収入だけに頼る賃貸住宅の経営も多角化すべきだという。ハードの話だけで空き家活用を捉えがちだが、ソフトの重要性を痛感した。
 前述したように住宅街において専用住宅が多く各々の住宅が高い塀で閉ざされ敷地が孤立しているように、そこに住む人々も孤立していった。それによって土地に根ざした人の繋がり(=ネイバーフッド)がなくなり、今まであった共助(地域の人がお互い助け合う関係)が、セルフケア(自助)もしくいは行政の公助に取って代わってしまった。空き家活用によってネイバーフッドを再生することはハードの問題だけでなく、共助、ケアに関わるソフトの問題でもある。これは慈善的そう思うとうよりも、生存戦略でもあり、どうやって強い地域をつくるかという問題でもあると思う。自分もいつか老い自助や公助だけでは生きていけなくなる時がくる。その時に生きていける街が必要なんじゃないか。

2022/03/08

Nara











奈良に二月堂のお松明を見に行った。 お松明が始まる直前に、それまで安全のため点いていた照明が一気に消えた時の暗さや静けさが、状況は全然違うがオペラが始まる時のようで胸が高鳴った。そこからの美しさは言うまでもない。視覚だけではなく、音や臭いにも圧倒された。

この行は二月堂の本尊、十一面観音に日頃の過ちを懺悔する意味があるそうだが、同じ日に奈良国立博物館で聖林寺十一面観音を見た。和辻哲郎の古寺巡礼でも言及されている有名な観音像でやっと見ることができた。


お水取りが始まった頃と同じ天平時代760年代につくられたそうで、他に比較するその頃の日本の彫像を知らないが、ギリシャ彫刻のようなプロポーションの美しさを感じた。
空気を纏った衣の表現はナポリで見たCristo velatoを彷彿させる。
全てを見透かすような眼差しとは対極的な頭の上に乗っている十一の仏面は各々が喜怒哀楽を素直に出した表情をしており、当時の激しい世情を想像させられるが、今とあまり変わってないのかもしれないと思った。






















内藤廣さん設計の鹿猿狐ビルヂングも見学した。表通りから建物内に路地をつくり、その路地を通ると敷地内の裏庭に繋がり、その裏庭が結節点となり旧館の中庭に繋がっているという動線が素晴らしかった。
























内部空間は奇をてらわない構造を素直に表した空間だと感じた。軒天の木が余分に感じるくらい割り切った仕上の考え方で建築が背景に徹している印象を受けた。





























高さ関係に関しては1階が天井高2800程、2階が3100程というのは、内部用途的にも周囲のコンテクスト的にも少し高いように感じた。道路斜線ギリギリを狙っているように見えるが、そこは少し疑問が残った。
実はこの建物にアプローチする際に旧館側から入ったのだけど、その時に感じた天井の低い空間の親密性や置かれている商品との距離が、新館では天井の高さとガラスの抜けによって拡散しているように感じた。それは対照的で面白い部分でもあると思う。
現状、この1,2階の高さの設定によって3階の若草山への眺望や抜けが確保されている。この建築がこれからこの街をつくる一つのモデルになるのであれば、向かいにも同じボリュームの建築が建ち、その眺望は無くなるがそれでも良いのかもしれない。いつまでも2階建ての町家が残っていることだけが京都や奈良の価値ではないと思う。